3.22.2024

K151 風とはしったら

今回の18曲のスコアリングは、
風とはしったら アウトテイクvolume02の、
脚本と映像をイメージして作曲をしている。
既存の映像のスコアとしては使わない。
寧ろ音楽を必要としない脚本になっている。

此の作品だけは物語の細部まで全て理解していて、
フィクションでも他人事だとは思えない。
僕には此れ以上に難しい作曲はない。
他の29曲と同様、誰がどこに使うかは如何でも良い。
此れは飽くまで仕事。遣残した仕事。


風とはしったらのミュージックビデオには、
4つの大切な人を失った物語が描かれている。
その中の2つのエピソードをアウトテイクとして、
セリフのある映像作品を制作した。

どちらも音楽は必要なく、
セリフと謂ってもそれは独言で、
独言は頭の中で語っていた方が自然だ。
自分の思考を朗読している。

会話を含む物語ならセリフは必然になり、
演技をする方も、演技指導にも不安要素があった。
表情だけなら表現は可能。
寧ろ欲しい表情になる脚本にすれば良い。
お散歩バニーでヒントは得ていた。
あとは2人の声質が歌う以上に朗読に合っていた事。
真摯な作品が如何しても必要だった。


volume02の物語は、
作曲のスケッチをしながら、ト書きの補完は出来たと思う。
今回はvolume01を可能な限り思いだしてみる。
既に脚本は残っていなかった。

恋人を失くす物語は世界中に数多在る。
汎用でも4つの物語の中では切離せない。

他3つの物語では泣く事を描かなかった。
泣く事は漠然とした救済で、
全部受け入れて自分で気づく事がテーマ。
答えは過去の自分と失くした大切な人の物語の中にある。
此の物語だけは泣く事を要求した。

物語を知っている方なら判ると思うけれど、
彼女の絶望は数年間続く。泣くよりも、
虚無と焦燥を何度も数年間繰返した事になる。
その絶望に生きる事を諦めても責められない。

最大の絶望が訪れたのは、
日々の中で、自分の意思で愛情を注いで、注がれていたから。
愛の中に居れば現実は遠くなる。
或日、独りの現実に世界は一変する。あまりにも重い。
主人公はだんだん眠る時間が増えてくる。
現実逃避を考える余力もない。主人公の意思はない。
身体が生きる事を止めようとしていた。

唯一避けていた場所へ赴いたのも、
たぶん身体が限界で、そこで眠ろうとした。12月の寒い夜。
そこで気づけた事はファンタジでしかないけれど。
撮影でも泣くまでに時間がかかった様だけれど、
その時間がとても大切。
もう彼女には誰も居ないから、自分を救済する涙は必須。

酷い物語だと思いながらも決定したのは、
絶望から生まれる表情が似合うと思ったから。
決して幸薄いと謂う意味ではなくて。
僕はあまり撮影に参加していなかったけれど、
撮影に携わった中の2つのシーンで試したい事があった。
絶望なら良かったけれど、それとは異なるベクトルで、
僕に少し自信が足りなかった。自信がない事は採用しない。
歌とは違って映像で不確定なアイデアを出して、
そのリカバリをする事は更に不確定が過ぎる。
でも、今ではチャレンジしておけば良かったと後悔している。


此のvolume01にも音楽を載せたいけれど、
先述の通り既に脚本が存在しない。
当時の自分の情熱には追いつけないし、
疎覚えで改変をしてしまう事は、
当時の自分に笑われる行為だ。
勿体無いな。物語は幾つも書けない。



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